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2022/07/28
やりがい
日本語教師の魅力とは?
新型コロナの影響で、日本への入国者は減少しました。
しかしここ10年ばかり、日本国内の外国人と日本語学習者の数は増加の一途を辿っていました。アフター・コロナと呼ばれるように、コロナ禍が終息した後には経済の回復と発展が見込まれます。
ここではそうした事情も踏まえ、メリット・デメリットに分けて、日本語教師の魅力について考えていきます。
1.日本語教師のメリット
日本語が母語というアドバンテージを生かせる
よく言われるように、日本語は難しい言語です。
英語のネイティヴなら、少し勉強すればフランス語やドイツ語もできるということも珍しくありません。が、これが中国語や韓国語、ましてや日本語となると、独学では困難を覚えるケースが非常に多いです。アルファベットとは全く異なる文字はもちろん、文法も思考様式もまるで異なるからです。
そのため、日本語を長く学んでいて日常会話はできるという方でも、『若者言葉が入ってくると聴き取れない』とか、『難しい漢字が出てくる文章は読めない』といった感想を耳にします。
いま、この記事を読めているあなたは、カタカナも漢字も、日常では使われないような難しい語彙もマスターしているはずです。日本人なんだからそんなのは当たり前じゃないか、と思われるかもしれません。
しかし、思い出してみて下さい。それは義務教育の9年間、ひらがなから始まる国語の時間に漢字や難しい表現を身に付けてきた成果です。日本人でさえそれだけの時間を費やしたのだから、第二言語として学ぶ外国人にとっていかに難題であるか、推して知るべしでしょう。
まったく日本語が話せなかった生徒たちが、日本語でコミュニケーションをとれるようになっていく姿を見ることはやりがいを感じさせ、多くの教師がこの仕事にハマってしまうと語ります。日本語教師の仕事内容とは?なり方から求人の傾向までを紹介! | にほんご日和でも詳しく紹介されているとおり、日本語を教える仕事が〈子育て〉に喩えられることもあるのはそのためでしょう。
したがって、聞く・読む・話す・書くの4技能について、日本語を使いこなせることはすでにアドバンテージ(強み)であると言えます。日本語教師は、あなたがすでに持っている能力を生かすことができます。
また、生徒に対して、成長を見守る、ということ以外にも生徒との交流そのものをやりがいに感じている方もいます。
例えば日本語教師ってどんな仕事?第8回 日本語教師の魅力って?~その1~でも、一方通行の教授ではないことに加え、生徒と先生の間での双方向の交流、人との繋がりをキーワードに日本語教師のやりがいが紹介されています。日本語教師のやりがい・楽しさ・魅力でも、「生徒から学べることがたくさんある」とポジティブに紹介されており、多くの先生が生徒とのやりとりのなかにやりがいを見出していることがわかります。
需要が増えている
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外からの入国者が少なくなっているのは先に記したとおりです。
ですが日本はそれまて、外国人労働者を増やす政策を進めていました。これからも労働力の多くを、外国人労働者に頼ることになるでしょう。
(もちろん、これには反対意見もあります。しかし日本は、少子高齢化で労働人口が減少しているため、国内だけで人手不足を埋めるのは困難です。学生や働き盛りの出産をタブー視する風潮や、各家庭が負担する養育費の高さを考えても、日本で今後出生率が改善される見込みは絶望的と言ってよいでしょう。若い働き手がいない以上、これからも外国人労働者は増えていくことが予想されます。)
実際、2017年の時点で、日本語学習者23万9597人に対し、日本語教師は3万9588人でした(文化庁調べ)。教師数にはあまり変化がありませんが、学習者の伸びが著しく、日本語教育は売り手市場なのです。
考え方の異なる人々を相手に働ける
日本人の多くに共通する気質(国民性)とはどんなものでしょうか?
勤勉で、礼儀正しく、周りの視線を気にして、空気を読む…。昔から言われる特徴ですが、これは現在でも変わっていません。それどころかSNSの普及によって、〝他人のことを気にする文化〟はより強まったと言えるかもしれません。外面的な世間体を重視する日本文化は「恥の文化」と呼ばれることもあります。
しかし、時にはその均質性や同調圧力が息苦しく感じられることがあるのも事実。日本人しかいない職場で働いていて、『仕事自体は好きだったけど、人間関係が気になってしまい仕事をやめた』という例は後を絶ちません。そんな時、『外国人の多い職場なら環境が異なるかもしれない』と思うのは当然な成り行きです。
が、その多くは『でも自分は英語も中国語もできないし…』とぼやいて、結局似たような職場に戻っていくことになります。
日本語教師は、そのような方にこそお勧めできる職業です。なぜなら日本語教師は、日本語しかできなくても、外国人を顧客として働くことができる仕事だからです。
「日本語教師の楽しいことと大変なこと」では外国に憧れがある方で、英語が得意ではない方の経験を読むことができますが、とても参考になります。外国人の多くは日本人に比べるとおおらかで、チャレンジ精神に富んでいることが多いです。あえて難しい日本語に挑戦しようというだけあって、高い目標(日本の大学院への進学や、仕事でのキャリアアップなど)を持っていることも多いです。だから学習意欲も高く、しばらく会わないでいるうちにレベルが上がっていることに驚かされることも多いとか。
「日本語教師のやりがいを聞いてみよう」でも語られていますが、さまざまな国籍を持つ生徒が、同じ日本語を通して会話するのを見るのは、喜びの一つだと言えます。
時給が高い
日本語教師の時給は、1500円~2000円程度が相場だと言われています。
これだけ見ると、かなり良いように見えます。日本人がみんな豊かで「一億総中流」などと言われていたのはもう四十年以上前の話です。現在の日本には、時給800~900円代の最低賃金で生活されている方々も大勢います。貧富の格差が拡大した現在、他業種と比較してこの価格帯は〝だいぶマシ〟と言えるでしょう。
それとも同じ語学教師なら、日本語教師よりも英語教師の方が収入が高いのでしょうか? 気になりますよね。
一例として、大手の英会話塾では英語ネイティブの人材を採用していますが、時給は1200~2200円程度だそうです。この相場は日本語教師と大差ありません。時給だけを考えれば、日本語教師は高めだと言えます。
海外で働ける
台湾、タイ、ベトナム、インドネシアなど、日本語の需要が高い国々では、日本語教師の求人が多いです。
一見給与が安く見えることもありますが、物価と比べてみると実は結構な額で、日本よりも暮らしやすいことも少なくありません。
日本語教師として働く中で現地の言葉を身に付ければ、別な業種へ転職する可能性も開けてきます。海外で働いてみたい方は、まずは日本語教師から始めるという選択肢もあるでしょう。
国内にはアジア諸国で働くための支援を行っている機関もあるので、興味がある方は調べてみるとよいでしょう。
また、「日本語パートナーズ」という制度もあります。詳しくは後述しますが、こちら「就職前に海外経験を積む! 大学卒業前後に参加した3人の座談会 | インタビュー | 日本語パートナーズ」の体験談も確認してみてください。また、海外を拠点とする日系企業におけるレッスン講師や、海外でのボランティアとして働く道もあります。日本語教師とは? 全国日本語教師養成協議会でも詳しく説明されています。
JICAの青年海外協力隊で働いていた方のインタビュー「日本語教育の楽しさを多くの人に伝えたい」もとても参考になります。海外においても、日本語教育という絆でつながって再会する、と言ったこともあるようです。こうした人と人との繋がりも前述の通り日本語教師の魅力であり、国内に留まらない人間関係を築くことができるのは日本語教師の大きな特徴の一つでしょう。
オンライン対応で世界中に仕事がある
これからの日本語学習で、注目されるのがオンラインレッスンです。
一対一のプライベートレッスンを受け持ちたいのに希望者がいない、というのは、インターネットが普及していなかった昔の話。今では地方や海外から、一対一でのレッスンを希望する方をたくさん目にするようになりました。
緊急事態宣言の下で、接客業やスポーツジムなど、対面が不可欠な多くの職種が苦境に立たされました。リモート対応をしようにも、それが不可能な業種ではどうしようもありません。
それに対し日本語教師は、オンライン対応ができる職種です。
リモートワークの普及により、各国でインターネットを介した学習環境が急速に整ってきています。コロナ禍が終息しても、遠方から日本語ネイティブに指導を受けたい外国人がいなくなることはないでしょう。
2.日本語教師のデメリット
このように日本語教師にはメリットもありますが、『日本語教師はやめておけ』という意見も、ときどき目にします。なぜでしょうか? 次はデメリットについて検証してみることにしましょう。
年収は低め?
日本語教師は、他業種に比べて収入が低いと言われます。(さっき見たように)時給自体は悪くないのに、なぜこのようなことが起こるのでしょう?
原因は、非常勤で仕事を始めた場合のコマ数が少ないからです。時給が高くても受け持つ授業が少ないと、月収や年収が低めになるわけです。
(英会話スクールに勤めるネイティヴ講師の場合だと、レッスンは少人数制で、次から次へと受講者がやってきます。教材も英会話スクール側が用意し、講師はマニュアルに従って授業前に準備すれば、充分にレッスンを行うことが――また受講者も満足して帰っていくことが――できます。日本語学習では、そのような回転率の良いシステムが整っていないように感じます。)
しかしその分、自由な時間も増えるので、『空き時間に他のことをしたい。自分の夢を追いたい』、といった方には、向いている職業と言えます。
収入が気になる場合は、日本語学校などで専任講師(会社で言えば正社員)になるという道があります。この場合は月収20万円以上に設定していることが多いです。
収入については「日本語教師の魅力とは?やりがいや楽しさ、将来性」にも詳しく紹介されているため、そちらも合わせてご確認ください。
仕事が大変?
日本語教師の仕事は大変なのでしょうか。特に授業準備についてそう言われることがあります。
しかしこれは初めのうちだけで、慣れればさほど時間をかけずに済ませることができるようになります。一度作った資料はまた使うことができますし、学校によってはテキストブックを定めている場合もあります。業務内容は先に確認しておくとよいでしょう。
他に、試験の作成や成績の管理を任されることもありますが、これについても同じことが言えます。
同時に知っておきたいのは、授業準備や成績管理など日本語教師で大変だと言われている仕事は日本語教師だけでなく、教職すべてに共通するデメリットだということです。であれば他業種と比較するだけでなく、教師という仕事について考えてみる必要があるでしょう。
また、「【日本語教師の働き方】きついって本当?」などのサイトでは、日本語教師として大変なのは最初の1、2年であるとも言われています。最初のうちにしっかりと努力すれば、そのうちに慣れてきて、楽しさややりがい、魅力が上回ってくるようになるでしょう。
3.他の教職と比べてどうなの?
そこで比較してみたいのが、その他の教職です。中・高の教師、小学校の先生、塾や予備校の講師、大学の非常勤講師などいろいろありますが、それらと比べた時、はたして日本語教師は割に合わない仕事なのでしょうか?
中学・高校の教員
まず中学校や高等学校の教員になるには、各科目ごとの教員免許を必要とします。取得には、大学の教職課程を履修するのが一般的です。(教育学科で取れるのはもちろんですが、日本文学科なら国語の中・高免許を、数学科なら数学の中・高免許を取得できる大学が多いです。)
収入面は、常勤・専任の場合はそこそこの稼ぎになります。一般企業のサラリーマンより少し低い程度から始まり、基本は年功序列で収入が上がっていきます。
しかし近年、マスコミでも取り上げられるように、他業種と比較してブラックさが目立ちます。特に気になるのは勤務時間で、朝の8時から学校に来て、それから19時近くまで11時間程度は学校にいるのが普通です。朝は朝礼にHR、放課後は部活指導や職員会議など、授業以外の校務があるからです。学校行事の準備もあります。
また信じがたいことですが、残業代は基本、出ないシステムになっています。残業代を一定の割合(月額の4%)で給与に上乗せしてくれるのですが、残業時間を時間では測らないため、働けば働いただけ損をする制度になっています(給特法という法律による)。
小学校の教員
小学校教員を最初に紹介しなかったのは、免許が取得できる大学が限られているからです。基本的には大学の、教育学科や児童学科に限られます。取得を考えている方は、事前に確認しましょう。
小学校を思い出せばわかると思いますが、授業は担当するクラスの全教科を教えなければなりません。もちろん授業準備もその数だけ要ります。
そして子供たちの成長過程を考慮しながら、生活指導をしていく必要があります。行事の準備や保護者対応があるのは、中高と同じです。
とりわけ子供の好きな方に、向いている仕事と言えます。
塾や予備校の講師
塾や予備校の講師はどうでしょうか。生徒指導はほとんどありませんが、生活が夜型になります。学校が終わってから生徒が来るので、おおむね13時~22時の勤務が多いようです。
プロ講師の場合は合格率が物を言う厳しい世界になるので、高校時代に受験勉強が好きだった方以外にはあまりオススメできません。しかし特別な免許などはいらないので、その塾の筆記・面接試験に合格すれば指導を開始できます。
(ただし近年は改革で受験方式が大きく変わっているので、どの塾が生き残っていけるか不明瞭です。正社員をめざすなら最新の情報をリサーチしておくことを勧めます。)
大学の非常勤講師
また大学の非常勤講師は、資格として最低でも大学院の修士号が必要です。(ほとんどは博士号を条件にしています。)
そのため時給は少し高めですが、求人自体がとても少ないです。週に2、3コマしか授業を持てないことも多く、結果として収入が低くなります。いくらその道の専門家でも、複雑なトポロジーや解析力学、鎌倉仏教や日本国憲法の授業を、同じ学校で毎週何10コマもやらせてはもらえないのです。それを学びたい人間が、限られているからです。
結果、助教や准教授として採用されるまではそれだけで生活できないことが多く、他のバイトなどと掛け持ちすることになります。
日本語教師
日本語教師については、上で述べたとおりです。他の仕事と同じく、良いことも悪いこともあります。
しかしこうして比べると、『部活指導などで長時間残らなくてもよく、教えるのは日本語だけでいい。求人も一定数は出ている』という日本語教師はかなり魅力的に思えます。
求人に関して、やはり割合としては非常勤が多いものの、時期を問わず基本的には一定量を見つけることができます。
顧客として成人を相手できることもあり、教師という特殊な職業の中では、まだしも一般企業の会社員と似た働き方ができると言えるでしょう。
もしあなたが、『仕事は多くても構わないから、安定した収入を得たい』と思うのであれば、教員免許を取得して小・中・高の常勤教員を目指しましょう。授業外の雑務が大変ですが、中小企業のサラリーマンと同じ程度には安定した給与を得ることができます。
一方、『そこまで高収入ではなくていいから、自由な時間や心理的なゆとりが欲しい』ということであれば、日本語教師は選択肢の一つと言えるでしょう。授業数や雇用形態によって、自分に合った働き方を選べます。
また日本語学校などで専任になれば収入も安定し、生徒指導もあるものの、基本的には8時間程度で済みます。経験を積むことで主任候補・専任などのポジションの求人にも応募できるようになり、待遇面でも向上が見込まれるでしょう。日本語教師の詳しい待遇については「日本語教師の勤務時間・休日」もご参照ください。
日本語教師は、日本語教師になるための道が多くあるのもまた目指しやすさの要因の一つです。
主なルートは以下の3つです。
- 日本語能力検定試験に合格する
- 大学・大学院で「日本語教育主選考(または副専攻)を修了する
- 420時間の日本語教師養成講座を終了する
日本語教師になる方法、条件については、「日本語教師になるには?仕事内容や働く魅力・目指す方法まで詳しく解説」や、「「日本語教師」という仕事の魅力あれこれ」にも詳しく記載があるので、そちらもご覧ください。
1点目の日本語能力検定試験に関しては、参考書などを使いながら独学で目指すことができます。2点目は大学や大学院への入学が必須になるため、個人では難しいかもしれませんが、3点目に関しては大学などに限らず、「東洋言語学院」をはじめとして、様々な学校や機関が講座を提供しています。自分に合う講座を選んで受講するのが良いでしょう。
●まとめ
いかがでしたか? 今回は、アフター・コロナという切り口から、これからの日本語教師の魅力について考えてみました。
日本語教師に限らず、その仕事を取り巻く状況は変わっていきます。それに流されるのもチャンスに変えるのも自分次第。目先の状況や条件に捕らわれず、自分に合った仕事を見つけたいものです。