日付2022/02/10

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日本語教師「資格」の「難易度」は?

日本語教師として就職するためには資格が必須です。日本語教師となるためには、3つのルートがあります。この記事ではその3つのルートをご紹介し、それぞれの方法について、資格取得までの難易度についてご説明します。

この記事でわかること(目次)

タイトル:日本語教師「資格」の「難易度」は?

1 日本語教師の「資格」を取得する3つの方法

2 日本語教育能力検定試験の「難易度」や「受験資格」

2.1 日本語教育能力検定試験の「難易度」

2.2 日本語教育能力検定試験の「合格率」

2.3 日本語教育能力検定試験の「受験資格」

2.4 日本語教育能力検定試験の「試験の水準」と「試験の構成」

2.5 日本語教育能力検定試験の「出題範囲」

2.6 出題範囲変更のポイント【2022年の試験から実施予定】

2.7 確実に合格を目指すなら「検定試験対策講座」

2.8 独学で合格を目指すのに必要な「勉強時間」

3 検定試験以外に日本語教師「資格」を取る道の「難易度」

3.1 大学・大学院で履修する場合の難易度

3.2 日本語教師養成講座(420時間)を受講する場合の難易度

4 日本語教師の「国家資格化」で資格取得の「難易度」は上がる見込み

4.1 国家資格「公認日本語教師」になると難化する

まとめ

 

日本語教師の「資格」を取得する3つの方法

日本語教師には現在、公的資格は存在しません。日本語を教えるだけなら誰にでもできます。

しかし、「日本語を教える専門家としての日本語教師」を採用する日本語学校の多くが、教員採用の条件として、下の3つのうちどれか一つ、あるいは複数をあげています。

  • 文化庁が定めた内容を含む420単位時間(1単位時間は45分以上)の日本語教師養成講座を修了
  • 日本語教育能力検定試験に合格
  • 大学・大学院の日本語教育専攻(主専攻で45単位以上、副専攻で25単位以上)を履修・修

これら3つが当面、日本語教師の資格がわりと言え、有資格者と呼んでいます。また、日本語教師の国家資格化が検討されています。「公認日本語教師」の創設は、2024年以降の予定で、難易度が高まることが予想されています。

この記事では、まず「日本語教育能力検定試験」について難易度を含め詳しくお伝えします。その後、「420時間の養成講座研修」と「大学・大学院での履修」の難易度について検討します。

 

日本語教育能力検定試験の「難易度」や「受験資格」

国のガイドラインに定められた日本語教師「資格」3要件の中で、学歴がなくても資格を手に入れることができるのが「検定試験」合格です。

420時間の養成講座終了と検定試験合格をあわせて「W(ダブル)資格」と言うことがあります。これが日本語教師にとって、より「就職に強い方法」といわれています。

では、検定試験はどんな試験なのでしょうか?ここからは試験の概要についてお伝えします。

 

日本語教育能力検定試験の「難易度」

日本語教師_資格_難易度2-1

検定試験の難易度は中くらいです。大学を卒業するより難易度は低いですが、420時間の養成講座修了よりは高いと言えます。

検定試験は年に一度、例年10月に実施されるペーパーテストです。日本語教育にかかわる幅広い知識が試されます。受験機会が年に1度しかないので、十分に学習してから試験に臨まないと、残念な結果になりかねません。標準的な学習期間は、約半年~1年です。

一部リスニング問題と記述問題はあるものの、合計4時間に及ぶ机上のテストにさえ合格出来れば、合格するのに実習や経験は必要ありません

ですから、広範囲の暗記学習に強く、体系的に物事を考える習慣がある人にとって、学習を計画的に進めることができれば、難易度は高くないと言えます。

 

日本語教育能力検定試験の「合格率」

日本語教師_資格_難易度2-2

 

年度

合格者数(人)

受験者数(人)*

合格率(A/B)

2021

2,465

8,269

29.81%

2020

2,613

9,033

28.92%

2019

2,659

9,380

28.34%

2018

1,937

6,801

28.48%

2017

1,463

5,733

25.51%

日本語教育能力検定試験の合格率は、直近54年間を見ると25%台から298%台で推移しています。約4人に1人は合格している計算です。受験者数の増加に伴って合格者数も増加しているいっぽう、合格率は上昇傾向が見られます。相対的な割合で合格者を出していると言えます。

 

日本語教育能力検定試験の「受験資格」

日本語教師_資格_難易度2-3

2021年度の日本語教育能力検定試験実施要項を確認すると、

受験資格「特に制限しない」

とあります。国籍・年齢・学歴・経験は不問ということです。誰にでも開かれている試験と言えるでしょう。

 

日本語教育能力検定試験の「試験の水準」と「試験の構成」

日本語教師_資格_難易度2-4

試験の水準は「日本語教育に携わるにあたり必要とされる基礎的な知識・能力」と実施要綱に記載されています。範囲は広いものの、日本語を教える教員となるための、基礎的な知識を問われる試験と言えます。

試験の構成

科目

時間

配点

内容

試験1

90分

100点

原則として、出題範囲の区分ごとの設問により、日本語教育の実践に つながる基礎的な知識を測定する。

試験2

30分

40点

試験1で求められる「基礎的な知識」および試験3で求められる「基礎的な問題解決能力」について、音声を媒体とした出題形式で測定する。

(リスニング問題・記述問題)加点あり。

試験3

120分

100点

原則として出題範囲の区分横断的な設問により、熟練した日本語教員の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する。

日本国際教育支援協会から引用、加筆)

 

日本語教育能力検定試験の「出題範囲」

日本語教師_資格_難易度2-5

検定試験の出題範囲は「広範囲」といわれます。では実際にどの程度の範囲なのでしょうか?

2021年度試験の要項を確認してみましょう。

区分

主要項目

1  社会・文化・地域

1.世界と日本
2.異文化接触
3.日本語教育の歴史と現状  
4.日本語教員の資質・能力

2  言語と社会

1.言語と社会の関係
2.言語使用と社会
3.異文化コミュニケーションと社会 

3  言語と心理

1.言語理解の過程
2.言語習得・発達
3.異文化理解と心理 

4  言語と教育

1.言語教育法・実技(実習)
2.異文化間教育・コミュニケーション教育
3.言語教育と情報 

5  言語一般 

1.言語の構造一般
2.日本語の構造
3.コミュニケーション能力 

日本国際教育支援協会から引用し、一部変更)

すべての試験範囲を転載すると、膨大な量となってしまうので、主要項目だけを抜粋しました。

例えば区分1では「日本の社会と文化」から「日本語教育の歴史」、さらには「世界の各地域における日本語教育事情」までが出題範囲です。

区分4では教育課程編成・カリキュラム編成・教授法から異文化教育、さらにはITリテラシーや教材開発にわたるまでが出題範囲となっています。

出題範囲を見るとペーパーテストだけの試験とは言っても、広範囲な学習が求められています。無計画に学習するだけでは太刀打ちできない内容と言えるでしょう。

では次に、検定試験以外の難易度についてご説明します。

 

出題範囲変更のポイント【2022年の試験から実施予定】

日本語教師_資格_難易度2-9

 

2022年度から日本語教育能力検定試験の出題範囲が変更される予定です。

主な変更点は「出題範囲のみ」です。それ以外に変更はありません。受験資格は特にないというのも変わりませんし、3つの試験を4時間で行うという試験構成にも変更がないということです。

出題範囲の変更は、文化庁が「日本語教育人材の在り方について(報告)改訂版」(平成 31 年)で示したものに試験を準拠させるのが目的です。

2022年度からの検定試験は、この報告書の中で文化庁が示した「必須の教育内容」に基づいて出題されます。「必須の教育内容」とは日本語教師の養成段階で必ず実施すべき教育内容のことです。

日本語教育能力検定試験の新しい出題範囲は試験実施団体である日本国際教育支援協会のホームページから確認できます。

 

確実に合格を目指すなら「検定試験対策講座」

日本語教師_資格_難易度2-10

 

日本語教育能力検定試験の合格を目指すなら、試験対策講座を受講すると効率的に勉強できます。

講座には主に3つのタイプがあります。

1.通信

2.通学

3.通信+通学

 

それでは、上の3つについて主な特徴をお伝えします。

1.  通信講座の特徴

通信講座はWeb上やDVDで講義を視聴、その後に問題を解きながら理解の定着を図るものが主流です。試験間際には模擬試験が用意され、カリキュラムをこなすことで確実に試験合格の力をつけることができます。

通信講座の最大の特徴は、学習する時間を自分で決められる点と、効率が良い点です。

通学講座のように、決まった時間が拘束されることもありませんし、独学のように自分で学習内容を決める必要もありません。自分で決めた時間に、講座のカリキュラムに沿って勉強できるのが最大のメリットです。

 

2.通学講座の特徴

通学講座の最大のメリットは、モチベーションの維持と、仲間作りです。毎週など決められた日時に学校に出向くことによって、途中で挫折する可能性が抑えられます。

また、同じ目標を持つ仲間とともに学ぶことで、情報共有ができる上に、教師となった後にも使える人脈を得られるなどのメリットも。

決まった時間が拘束されるので、自由度が低い点はデメリットともいえます。

 

3.通信+通学の特徴

通信と通学のハイブリットタイプです。WEBやDVDで講義を閲覧し問題演習をしたのち、実技・実習を通学で行う学校が多いようです。

検定試験合格者に不足しがちな、現場での実践力を、ある程度、補うことができると言えるでしょう。

 

以上、検定試験対策講座の3つのタイプをお伝えしました。対策講座は、420時間の養成校を受講するよりも費用が抑えられます

また、どのタイプを選んでも質問にも応じてもらえるほか、就職サポートをしてくれる学校も。賢く使って費用と時間を抑えることが可能です。

それでは、通信や通学などの講座を利用しないで合格するにはどうしたら良いでしょうか?

次に、独学で合格するための勉強時間や学習方法をお伝えします。

 

独学で合格を目指すのに必要な「勉強時間」

日本語教師_資格_難易度2-10

独学で日本語教師能力検定試験に合格するための勉強時間の目安は、「420時間」です。

これは、文化庁指針に準拠した養成校で、日本語教師「資格」を無試験で得るのに必要な学習時間に相当します。

 

勉強時間の目安は420時間

この420時間の勉強時間を6か月から1年かけて学習するのがおすすめです。

独学によって6か月で合格をめざすなら、1か月70時間の勉強時間が必要です。毎日勉強するなら平均して1日当たり2時間から2.5時間の勉強が必要です。週末だけ利用して集中して勉強するのであれば、1日当たり7時間から8時間の学習が必要です。

相当な時間の学習が必要なことがお分かりいただけるでしょうか。

独学で1年の時間をかけることができるなら、1か月あたり35時間の勉強時間が必要です。毎日勉強するなら、1日当たり1時間ちょっと、週末だけを利用して集中的に勉強を進めるなら1日当たり4時間弱の学習時間となる計算です。

長期間・広範囲な学習に一人で挑むのには、モチベーションを強く持つ必要があります。また学習時間を確実に確保し、決めた内容を着実に進めるよう工夫する必要もあります。

それでは、独学で合格を目指すには、どんな方法で学習をすればいいの?と思われた方に、おすすめの勉強の方法をお伝えします。

 

おすすめの勉強方法

基本的には、以下の順番で学習を進めるのがおすすめです。

  1. 知識の習得
  2. 問題演習
  3. 記述問題対策
  4. 過去問演習
  5. 予想問題演習

これらすべてについて、書籍を購入したり、インターネットで情報を入手したりすることになります。おすすめは書籍の購入です。1冊1~3,000円程度で購入できますので、手に取ってみることをお勧めします。

過去問については、毎年3月か4月ごろ、前年度の試験問題と解答が入手できるようになります。詳細は試験実施団体のJEESホームページをご確認ください。

上記の方法で入手した過去問は、問題と解答だけしかのっておらず、解説がありません。しかし、インターネットで検索すれば問題の考え方や解き方について解説しているサイトが複数見つかります。活用してみてください。

 

モチベーションを保つには

能力検定試験の勉強は、長期間で広範囲の学習が必要となります。約半年から1年かけて、毎日数時間の勉強を継続するためには、並大抵の努力では足りません。

同じ試験の合格を目指す仲間を作ったり、学習時間や学習ペースの管理をしたりすることが必須となります。

仲間作りと学習時間管理でおすすめなのは、「Sutdyplus(スタディプラス)」や「みんちゃれ」などのスマートフォンアプリを利用することです。

筆者が勉強をしていた時に活用していたのは「Sutdyplus(スタディプラス)」です。おなじ目標を持つ仲間と簡単につながることができるうえ、学習時間や学習ペースが図やグラフで感覚的にわかるようになっています。

学習がなかなか続かない!と思っている方はぜひ試してみてくださいね。

 

検定試験以外に日本語教師「資格」を取る道の「難易度」

日本語教師の有資格者となるには、検定試験の合格以外に大学卒業あるいは420時間の養成講座受講という道もあります。

 

大学・大学院で履修する場合の難易度

日本語教師_資格_難易度2-6

大学を卒業し、学士となるためには、大学入学試験を突破し4年間勉強しなくてはいけません。難易度はとても高いと言えます。

大学院で日本語教育専攻するには、入学試験・研究計画書の提出・要件が必要な場合があります。大学院や研究科によって入学が許可される方法はさまざまです。中には社会人入試が実施され、仕事と学業が両立できるようなカリキュラムが組まれていることも。興味のある大学院を調べてみてください。

日本語教師養成課程を実施する大学・大学は文化庁のホームページで公開されています。有資格者となるためには、大学・大学院の日本語教育専攻(主専攻で45単位以上、副専攻で25単位以上)を履修・修了するのが要件です。

 

就職には学士が有利

日本語教師として就職するためには、学士であるほうが有利となります。

なぜなら、「法務省告示校」において、日本語教師の条件に「学士」が加わりました。法務省告示校とは、留学ビザが与えられ、外国人留学生を受け入れることが可能な日本語教育機関のことです(出入国管理庁:告示された日本語教育機関等)。

日本語の専門学校や、専門学校や大学で学ぶ留学生に対して日本語を教えるためには、大学を卒業し学士を保持しているほうが有利です。また、「公認日本語教師」として認定されるためには学士である必要があると見込まれています(文化庁・文化審議会国語分科会)。

文学部や国際交流学部などを卒業していない人でも、すでに学士の方であれば、大学に再入学する必要はありません。改めて学士となると難易度は高まります。しかし、養成校(420時間)終了や検定試験合格で、いわゆる日本語教師の有資格者となります。

 

日本語教師養成講座(420時間)を受講する場合の難易度

日本語教師_資格_難易度2-7

資格を確実に得るためには養成講座を修了するのが、難易度の一番低い方法でおすすめです。理論的な学習だけでなく、実技も身につけられるようカリキュラムが組まれています。終了さえすればすぐに教師として活躍できる素養を得ることができます。

420時間の養成講座を選ぶ際には、「文化庁届出受理校(文化庁)」に記載されている学校の研修講座を選択するのが賢明です。

注:文化庁届出受理校とは、「文化庁国語課への届出を受理された日本語教師養成研修実施機関・団体(文化庁)」のことです。

 

養成校では教育技術も身につけられる

実際に教師として活躍するためには、知識だけでは足りません。養成講座での模擬授業、授業教案作成、教育実習を通して、教師としての経験を得ることができます。

教師として採用され、学校の即戦力となるためには、教育の技術を身に着けることが不可欠でしょう。養成校ではこの教育技術も420時間カリキュラムの中に組み込まれています。

養成校の修了は、教師となる3つの方法の中でも難易度が低く、教師を目指す方たちに人気があります

 

日本語教師の「国家資格化」で資格取得の「難易度」は上がる見込み

2020年3月、文化庁文化審議会国語分科会の「日本語教師の資格の在り方について(報告)」のなかで、日本語教師の資格の枠組みとして「公認日本語教師」を創設することが明記されました。

2024年以降になると見込まれていますが、日本語教師に国家資格が与えられることが検討されています。

 

国家資格「公認日本語教師」になると難化する

日本語教師_資格_難易度2-8

「公認日本語教師」が設置されたら、難易度は非常に高くなります。2024年度以降の話となりますが、国家資格を取得する要件は以下の【すべてを満たすこと】となっています。

  • 4年制大学卒業以上(学士)
  • 検定試験合格
  • 規定時間以上の教育実習を修了

(文化庁文化審議会国語分科会の「日本語教師の資格の在り方について(報告)」より引用、加筆)

これら3つの条件をすべて満たすのには、多額の費用と多くの時間が必要となります。国家資格にふさわしい難易度になると言えるでしょう。

 

まとめ

日本語教師になるための難易度は、費用と時間を考慮し、難易度が高い順に下のようになります。

大学・大学院の主専攻あるいは副専攻で日本語教育科目を履修し、卒業・修了

日本語教育能力検定試験を受験し、合格

文化庁が定めた内容を含む420単位時間の養成講座を受講し、修了

 

国家資格である公認日本語教師が設置されても「現職の日本語教師を排除する形にならないよう経過措置を設けるなど配慮を検討していく第4回日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議 議事概要)」予定です。

国家資格化の前に日本語教師の有資格者となると、経過措置の間に国家資格を入手できる可能性が出てきました。社会的な認知度が高まり、地位や待遇の向上も期待されている資格です。今のうちに目指す価値があると言えるでしょう。

注:この記事における公認日本語教師の情報は2021年12月時点のものです。文化庁で議論が継続されていますので、記事に記載の情報は今後変更される可能性があります。最新情報は文化庁ホームページ等で確認してください。

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