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2022/02/08
将来性
将来が不安な日本語教師が知っておくべきこと
「外国の方に日本のよさを伝えたい」「海外で暮らしたい」など、日本語教師を目指すきっかけはさまざまです。実際、日本語教師の需要は年々高まっています。
しかし、給料があまり高くないうえに業務量が多いという噂もあることから、日本語教師としての将来に不安を抱いたり、日本語教師はやめたほうがいいのかと葛藤したりする人もいるのではないでしょうか。
結論から述べると、アルバイトやパートなどの日本語教師の年収はそれほど高くありません。そのため、日本語教師としての将来に不安を抱えている人は、きちんとしたキャリアプランを練っておく必要があります。
当記事では、勤務先や雇用形態別の日本語教師の平均的な給料をもとに、日本語教師としての将来を考える際に役立つキャリアプランを紹介します。日本語教師としての将来に不安を抱いている人は、参考にしてみてください。
日本語教師の不安材料の一つは収入面
日本語教師の収入は雇用形態などで変動する
日本語教師の収入は、勤務先や雇用形態によって大きく変わります。
【状況ごとの日本語教師の年収例】
雇用形態 |
勤務先 |
平均年収 |
アルバイト・パート (非常勤講師など) |
国内の日本語学校 |
約200万円 (1コマ1,500円〜2,000円) |
国内の大学など |
約300万円 (1コマ3,000円〜4,000円) |
|
正社員 (専任講師など) |
国内の日本語学校 |
約330万円 |
国内の大学など |
約600万円 |
①日本語学校の非常勤講師(パート・アルバイト)
日本語学校に勤める日本語教師は約7割が非常勤講師です。日本語学校の非常勤講師は経験がなくても雇ってもらえる可能性があるので、日本語教師としての将来を考える第一歩になるでしょう。
ただし、非常勤講師の場合、1コマ当たりの給与となるため、働く日数によって月収や年収が変動します。専任の日本語教師と比べるとどうしても収入が低くなってしまうので、多くの日本語教師の不安の種になっているのです。
たとえば、大阪の日本語学校「BASIC日本語学院」の求人情報を見てみると、月収は約10万円、年収は約120万円になると推測できます。
大阪市のワンルームのアパートの家賃は平均5万円〜6万円程度なので、固定費や食費などを踏まえると手元にはほとんどお金が残らないと言えます。
そのため、日本語教師としての将来を考えたい人は、日本語学校の非常勤講師で経験積んでから、専任講師や大学での非常勤講師を目指してみましょう。
②大学などの非常勤講師(パート・アルバイト)」
未経験の人が応募できることはほとんどありませんが、経験を積めば将来、大学の非常勤講師として日本語教師になれる可能性があります。
大学の日本語教師であっても、非常勤講師である以上、給与は1コマあたりで支払われます。とはいえ、大学の非常勤講師の1コマあたりの給与は、日本語学校の非常勤講師の1コマあたりの給与よりも倍近く高いのが特徴です。
たとえば、西南学院大学の求人を見てみると、1コマ(100 分)あたり約10,000円と記載されています。週に4コマの場合は月収約16万円、週に5コマの場合は月収約20万円となります。
ただし、大学は夏休みなどの長期休暇などもあり、その間は収入が断たれてしまいます。そのため、大学の非常勤講師で日本語教師になれたとしても、生活していくには他の仕事を掛け持ちする必要があるでしょう。
③日本語学校の専任講師(正社員)
日本語学校の専任講師は、祝日などが多く担当するコマ数が少ない月であっても、もらえる給料が減ることはありません。給与が1コマあたりではなく、月給制になるからです。
毎月の給与が安定しているので、日本語教師として将来生活していくことも不可能ではないと言えるでしょう。
ただし専任講師の求人の場合、ほとんどの日本語学校が日本語教育の経験者を求めているので、未経験の人がすぐに専任講師になれるわけではありません。
たとえばJIN東京日本語学校の専任講師の求人を見てみると、月収21万円ですが「非常勤、常勤を問わず日本語教育機関で1年以上クラス指導のご経験がある方」というのが応募条件になっています。
そのため、日本語学校の専任講師になれるか不安な人は、未経験でも応募可能な求人を探すのではなく、まずは日本語学校の非常勤講師などで経験を積むことを検討してみましょう。
④大学などの教員
日本語教師としての生活に不安を抱いている人は、大学などの教員や専任講師を目指してみることをおすすめします。日本語学校の専任講師よりも高い収入を得られるからです。
日本語教育に関わる教員の求人をみても、支払われる給料を明示しているところは多くありません。実際に宮崎大学の求人を見てみると、「本学職員給与規程に基づき支給」と記載されています。
ただし、大学の講師・助教授の平均年収を見てみると、約672万円であることが分かります。そのため、大学などの教員になれれば、収入の面で日本語教師としての将来に不安を抱くことはなくなりそうです。
大学や専門学校で教員になりたい人は、少なくとも修士以上の学位を求められるので、大学院入学を踏まえたキャリアプランをはやめに練っておきましょう。
海外も視野にいれると得られる収入も高くなる
日本語教師としての将来に不安がある人は、海外で日本語教師の仕事をすることも視野にいれてみましょう。海外の日本語教師は、国内の日本語教師よりも得られる収入が高い場合があるからです。
【海外に日本語教師を派遣している機関】
海外に日本語教師を派遣している機関 |
平均年収 |
JICA |
約350万円 |
国際交流基金 |
約480万円 |
① JICAの青年海外協力隊
JICAとはJapan International Cooperation Agencyの略称で、日本の政府開発援助や開発途上国における課題解決の支援を行う独立行政法人です。
JICAは、青年海外協力隊として日本語教師などのボランティアを世界各地に派遣しています。青年海外協力隊の日本語教師には、日本語教育の経験がない人でも応募することが可能なうえ、派遣先の言語を習得するためのカリキュラムも用意されています。
青年海外協力隊はボランティアであるため、給料をもらえるわけではありません。とはいえ、赴任先である海外で生活するための生活費が毎月300〜500$支給されますし、積立金として毎月2万円ほど日本の口座に送金されます。
また、青年海外協力隊を終えたあと無職になってしまう人は、社会復帰手当などの手当を別途もらうことができます。
そのため、一度青年海外協力隊で2年間海派遣された人は、帰国後、自分の銀行口座に200万円ほど貯金されていることになるのです。
ただし、任期は原則2年間なので、青年海外協力隊の日本語教師として将来ずっと生活していくことはできません。
日本語教師で将来生活していくためには、任期終了後に日本語学校の専任講師になったり、大学院に入学したりと、青年海外協力隊の経験を自分のキャリアプランに活かす必要があります。
② 国際交流基金の日本語専門家
国際交流基金とは、総合的に国際文化交流を実施する独立行政法人です。国際交流基金は、海外における日本語教育の支援を目的として日本語専門家を募集し、海外へ派遣しています。
2021年度の日本語専門家の募集要項を見てみると、日本語専門家の月収は住居費を含めると40〜70万円程度で、経験年数が7年以上あるとさらに報酬は高くなります。年収で考えると480〜840万円になるので、収入の面での不安はほとんどないでしょう。
得られる収入は高いですが、任期が原則2年と限られています。そのため、日本語教師としての将来を考えるのであれば、任期満了後に大学の教員を目指すなど、日本語専門家の経験を活かしたキャリアプランを練っておきましょう。
なお、国際交流基金の日本語専門家になるには、修士号以上の学士が必要であることに加えて、日本語教育の経験が2年以上必要です。将来、日本語専門家になりたい人はなるべく早いうちにキャリアプランを練って、応募条件を満たせるように行動しましょう。
日本語教師のキャリアプラン
日本語教師としての将来のプランは早めに練っておく
「日本語教師になりたけど何をしたらいいかわからない」と将来に不安を抱いている人は、キャリアプランを早めに練っておきましょう。大学の教員や国際交流基金の日本語専門家など、得られる収入が高い仕事ほど、応募条件が厳しいからです。
日本語教師でもっとも多い年齢層は50代ですが、将来が不安な人向けに20代・30代の平均年収を見てみましょう。
【年代別の平均年収】
年代 |
平均年収 |
20〜24歳 |
267万円 |
25〜29歳 |
370万円 |
30〜34歳 |
410万円 |
35〜39歳 |
448万円 |
20代の平均年収は約319万円、30代の平均年収は約429万円です。
非常勤講師以外の日本語教師の人は、20代の平均年収を超える収入を得られる可能性が高いです。しかし、30代の平均年収を超えるのは国際交流基金の日本語専門家と大学の教員以外だと難しいでしょう。
国際交流基金の日本語専門家や大学の教員になるには、2年以上の日本語教育の経験や修士以上の学士を求められる傾向にあります。
そのため、日本語教師としての将来を考えていくためには、早い段階でキャリアプランを練っておくほうがよいと言えるのです。
日本語教師の業務内容
日本語教師の主な仕事
日本語教師が具体的にどのような仕事をしているかを詳しく知らないため、将来に不安を抱いている人もいるでしょう。
ここからは、日本語教師の具体的な業務内容を紹介します。
【日本語教師の業務例】
- 日本語の読み書きや会話などを教える授業
- 授業で用いる教材の作成
- 試験問題の作成や採点
- 日本語能力試験(JLPT)の対策
日本語教師の主な仕事は、学生たちに日本語の授業をすることですが、その授業を行う準備にそもそも膨大な時間がかかります。
パワーポイントなどの授業内容に沿った教材を、1日の授業がすべて終わった後に準備をしなければなりません。
そのうえ、授業準備の時間には給料が発生しないので、コマ数ごとに給料が支払われる非常勤講師の人は、もらえる給料以上の時間が拘束されると覚悟しておく必要があるでしょう。
また、日本語学校には定期試験があります。この間は授業や授業準備と並行して、試験問題を作成したり採点したりしなければなりません。
クラスによっては日本語能力試験(JLPT)の対策も必要
日本語学校によっては、日本語能力試験(JLPT)の合格を目標としてカリキュラムを組んでいたり、クラスを分けていたりします。そのため、日本語学校や担当するクラスによっては、日本語能力試験の対策のための授業をお願いされる可能性があります。
日本語能力試験(JLPT)は、英語検定やTOEICの日本語版と捉えると分かりやすいかもしれません。日本語の「読む・聞く」の能力がどれくらいなのかを、N1〜N5までの5つのレベルで測ります。
日本の企業で働くならば、N1やN2レベルの日本語力が求められるので、学生を日本語能力試験の合格に導くのも日本語教師の仕事のひとつと言えます。
日本語学校では、日本語能力試験用の特別授業などが設けられている傾向があります。そのため、日本語教師としての将来を考えるならば、日本語能力試験の対策用の教案を準備しておくとよいでしょう。