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2022/08/02
資格
日本語教師に必要な【英語力】と【資格】を解説!
日本語を教えるだけなら、英語力も資格も不要。しかし日本語教師として就職し、専門家としてプロを目指す場合には、日本語教師の資格と英語力があるほうが圧倒的に有利です。日本語教師の適性についてはこちら『日本語教師に向いているのはこんな人』もご参照ください。
この記事でわかること(目次) 1 日本語教師に必要な【資格】を取るには 1.1 1.日本語教師養成課程を【大学・大学院で】履修 1.2 2.日本語教師養成研修【420時間】を受講 1.3 3.日本語教育能力検定試験に合格 1.4 英語力を生かして【海外】で日本語教師の資格を取得 2 日本語教師に必要な【英語力】 2.1 この記事での【英語力】の定義 2.2 【日本で働く】場合に必要な英語力 2.3 【海外で働く】のに必要な英語力 3 まとめ |
日本語教師に必要な【資格】を取るには
学校や企業に日本語教師として就職することを目指すなら、日本語教師の資格が必須となります。日本語教師の資格を得るには主に3つの方法があります。
1.日本語教師養成課程を【大学・大学院で】履修
2.日本語教師養成研修【420時間】を受講
3.日本語能力検定試験に合格
ここからは、3つの方法を具体的にご紹介します。
1.日本語教師養成課程を【大学・大学院で】履修
大学で日本語教師養成課程を履修すると、就職先の選択肢が広がるので人気です。
日本語学校の多くが日本語教師採用に「4年制大学卒業」を条件とするところが増えました。
なぜなら、「法務省告示校」において、日本語教師の条件に「学士の資格」が加わったのです。
法務省告示校とは、留学ビザが与えられ、外国人留学生を受け入れることが可能な日本語教育機関(出入国管理庁:告示された日本語教育機関等)のこと。
文学部や外国語学部、国際関係学部などで、日本語教育関連科目を履修し、卒業すると日本語教師の資格を得られます。大学の場合、主専攻で日本語教育関係科目を45単位以上、副専攻で26単位を履修する必要があります。
海外の研修先が用意され、日本語教育の実習ができる大学もあるようです。大学を卒業して学士となれば、日本語教師としての進路の幅が広がります。
2.日本語教師養成研修【420時間】を受講
文化庁が出すガイドライン「日本語教育のための教員養成について(文化庁HP)」で定められた420時間の研修講座を受講すると、日本語教師採用試験の応募資格が得られます。
働きながら夜間で受講できたり、オンラインのコースがあったり。受講者のニーズに合わせた講座が展開されています。日本語学校が併設されている講座もあり、そのような講座は受講が就職に直結するので人気です。
3.日本語教育能力検定試験に合格
知識のみが問われる試験で、実技がありません。合格すれば専門知識があるとみなされ、就職面で有利に働きます。試験は年1回、秋ごろに行われ、合格率は2020年度試験で28.9%(全科目受験者9,033人/合格者2,613人)。
受験するのに、学歴や年齢の要件はないので、誰でも受験できます。試験内容は広範囲にわたります。
最近の動きとして日本語教育能力検定試験は、令和4年度の試験より「必須の教育内容」 (文化庁)に準じた出題範囲に移行します。(日本国際教育支援協会より引用)
とあるように、日本語教師の国家資格化に向け、試験内容の移行が発表されています。
合格すれば文化庁の定めるガイドライン(文化庁)の日本語教師の有資格者になれますので、人気です。
独学できますが、短い時間で効率よく勉強するために「通信教育」を利用する人も多いです。合格を目指すための講座がたくさん開講されていて、時間や金銭面で余裕がない方にもおすすめのルートです。
これまでご紹介した3つの方法で日本語教師の資格を得るのには、英語力は不要です。しかし日本語学習者を相手に実習する場面では、「英語話せたら、もと交流できたのに」という場面があるかもしれませんね。
英語力を生かして【海外】で日本語教師の資格を取得
英語が得意な人の中には、海外で日本語教師の資格を目指したい方もいるでしょう。ここでは、日本の外で日本語教師の資格を得る方法についてご紹介します。
日本の企業があっせんする日本語教師養成講座
420時間の日本語教師養成研修を、海外で実施するプログラムです。主に日本の企業がプログラムを展開しています。
日本で開講している日本語教師養成プログラムと同じ講座を、海外で受講できるようにしているものや、日本で座学を行い、海外で実習を行うプログラムなどがあります。
中には渡航費や滞在費が含まれているプログラムもあり、海外での滞在経験が少ない方でも安心して参加できるようになっているものもあります。
海外の大学へ進学して日本語教師の資格を取りたい場合
残念ながら、海外の大学で日本語教師の資格を取得できるプログラムはありません。
しかし、例えばオーストラリアなどでは、LOTE(= Language Other Than English: 外国語教育)が盛んで、日本語を外国語として学ぶ学習者が40万人以上います(国際交流基金の調査による)。LOTEの教授法を学べる大学があり、現地の教員資格が取得できる学校もあります。
日本語教師に必要な【英語力】
日本語教師になるためには、英語の資格は必要ありません。英語力があるからと言って日本語教師になれるわけでもありません。しかし、就職するときに英語力があると断然有利です。
英語でコミュニケーションが取れると、学習者と会話の幅が広がります。海外で就職するには英語力に加えて日常会話程度の現地語も必要でしょう。
例えばご自身が海外留学を経験していて、英語による会話がスムーズにできるとしても、ご自身の持っている英語の力を証明する必要があります。多数の応募者の中から「書類選考を突破」し選ばれるためには、英語力を裏付けるための【英語の資格】があると有利です。
この記事での【英語力】の定義
この記事でお伝えする英語力の定義は以下の通りです。
*CEFR(文部科学省のHPより)を参考に【英語資格】をレベル別に分けましたので、ご参考になさってください。
レベル |
英語の資格 (ご参考) |
|
A |
高度な英語力を持ち、十分なコミュニケーションが可能(A) |
・英検準1級以上 ・国連英検B級以上 ・TOEFL®550点(CBT 213点、iBT 79点)以上 ・TOEIC®730点(S&W 290点)以上 |
B |
どんな状況でも、適切な意思疎通ができる(B) |
・英検準1級、2級 ・国連英検B級、C級 ・TOEFL®500点(CBT 173点、iBT 61点)以上 ・TOEIC®640点(S&W 260点)以上 |
C |
限られた範囲であれば、コミュニケーションが可能(C) |
・英検2級 ・国連英検C級 ・TOEFL®470点(CBT 150点、iBT 52点)以上 ・TOEIC®500点(S&W 220点、Bridge 154点)以上 |
D |
日常会話なら可能(D) |
・英検準2級、3級 ・TOEFL®410点(CBT 103点、iBT 34点)以上 ・TOEIC®330点(Bridge 130点)以上 |
誤解がないようにお伝えいたしますが、資格を保持しているからと言って、コミュニケーションのレベルが十分とは言えない可能性もあります。しかし、就職するにあたり、資格を保持しているとことは英語力を裏打ちするための大切な証明となり得ます。
また、日本語が母語の日本人にとって、外国語である英語を習得した経験が、日本語教師の活動の中で活かされると考える人もいます。
【日本で働く】場合に必要な英語力
教える場所や学習者のレベルにより、必要となる英語力は異なります。
日本国内で日本語教師となる場合には、日本での「生活者としての外国人」を支える立場になります。生徒のアルバイト応募、住居のお世話、行政手続きなどを支援。教える場に程度の差こそあれ、日本での生活をスムーズに送るために必要な、日本語を習得するお手伝いをすることになります。
それでは、状況別に【最低限必要な英語力】をお伝えします。
日本語学校で初級者に教えるのに必要な英語力
求められる英語レベル:限られた範囲であれば、コミュニケーションが可能(C)
学習者は、日本語はおろか英語すら話せない場合もあるでしょう。日本語学校では日本語を使って日本語を教える「直接法」が主流です。英語・中国語・韓国語など、学習者の言語が話せれば有利でしょう。
英語を話すことができれば、学習者の質問に答えたり、生活のサポートをスムーズに行ったりすることができるでしょう。
中~上級者に教えるのに必要な英語力
求められる英語レベル:限られた範囲であれば、コミュニケーションが可能(C)
大学や専門学校などで日本語を教える場合、学習者はすでに日本語能力試験などの試験を突破し、ある程度の日本語力を備えています。指導法も「直接法」ですので、英語が求められる場面は初級者に教えるよりも少ないかもしれません。
大学や専門学校で教えるには、日本語教師としての経験年数や、修士・学士を取得していることが要件になっている場合が多いです。
高度な英語力が求められる場所:【間接法】で教える
求められる英語レベル:高度な英語力を持ち、十分なコミュニケーションが可能(A)
日本国内でも、英語で日本語を教える「間接法」で日本語教育している場合があります。
以下はその一例ですが、英語で日本語を教えることが必要なので、当然、高い英語力が必要といえるでしょう。
・インターナショナルスクールの生徒
・米軍基地の軍人やその家族
・外資系企業にいるエクスパッドやその家族
お手軽に日本語教師を経験【オンライン日本語学校】
求められる英語レベル:どんな状況でも、適切な意思疎通ができる(B)
日本語教師の資格がなくても、国内で日本語教師ができる場合があります。それがオンラインの日本語学校です。教師として採用されるためには英語力が必要です。
オンラインで日本の教師と学習者をつなぎ、学習者は海外にいることも。学習者の日本語レベルはさまざまです。文化や人種などさまざまな背景を持っている学習者が集まります。日本語を教えるだけではない交流が生まれることもあり、日本語のニーズもさまざまです。
どんな学習者にでも対応するためには、高い英語力が必要でしょう。
日本語ボランティアや言語交換
行政や民間機関が外国人の生活を手助けする日本語ボランティアを募集していることがあります。
例えば東京都なら「東京都防災(語学)ボランティア(東京都生活文化局)」で語学ボランティアを募集しています。万が一の災害のときに、東京都に居住する外国人の言語面をサポートするための事業ですが、実は災害がないときには東京都や区市町村が行う事業で通訳・翻訳が必要なときにも、活動協力をお願いする場合があります。
とあります。
留学生が日本に来てすぐの時に、ボランティアが日本語の教師として簡単な日本語を教える活動も含まれています。
防災(語学)ボランティアの英語の資格要件は、「英検準1級、国連英検B級以上、TOEIC®730点以上」などです。
また、言語交換で日本語を教えることもできます。言語交換(げんごこうかん、Language exchange)とは、違う言語のネイティブスピーカー同士がそれぞれの言語を他方が学ぶのを助け合うこと(Wikipediaから引用)
です。
日本語を教えるという意味で日本語教育の一助となっています。
【海外で働く】のに必要な英語力
海外就職に際しては応募要件に【英語の資格】が含まれていなかったとしても、履歴書と職務経歴書を英語で提出する場合や、英語面接がある場合もあります。採用する学校側のスタッフが、日本語を話せないこともあるからです。
日本語を母語として話す日本語教師が、海外で活躍するのに必要な英語力を、就職する場所別・状況別にご紹介いたします。
国際交流基金の調査では、世界142の国・地域で日本語学習者がおり、約385万人の日本語学習者がいるとの報告がなされています。学習者の人数1位は中国で約100万人、2位はインドネシアで約71万人、3位は韓国で約53万人。日本語の学習熱は高く、日本語教師が海外で求められている状況は変わりません。
アジアで就職する場合に必要な英語力
求められる英語レベル:限られた範囲であれば、コミュニケーションが可能(C)
アジアで日本語教師をする場合は「直接法」が主流です。言語能力は英語力よりもむしろ現地語が必要とされています。現地語が話せない場合には、英語が活躍します。
ご自身が生活者として現地で生活するために、現地語または英語が必要です。
欧米や豪・NZなどの英語圏で教える場合に必要な英語
求められる英語レベル:高度な英語力を持ち、十分なコミュニケーションが可能(A)
欧米やオーストラリア、ニュージーランドで日本語教師をする場合には「間接法」で教えることが求められます。間接法で日本語教育をするには高度な英語運用能力が求められます。
ネットには、海外から教師募集の求人がたくさんあります。応募資格に英語力の記載がない求人がありますが、「英語力はあって当たり前」なので、英語力に不安のあるかたは応募前に確認しましょう。
民間の海外派遣プログラムに参加
求められる英語レベル:限られた範囲であれば、コミュニケーションが可能(C)
日本語学校や養成講座を運営する機関が、提携する海外の学校に教師を派遣するプログラムです。中には日本語教師の資格や経験が不要のプログラムも。派遣期間も期間も数週間から長期にわたるものまでさまざまあります。参加費用が必要なことも。ご自身の条件に合わせてプログラムに参加してみましょう。
公的機関が実施するプログラムに参加
求められる英語レベル:どんな状況でも、適切な意思疎通ができる(B)
国際交流基金による「海外派遣プログラム」と、JICAによる「海外協力隊」が有名です。公的機関のプログラムで派遣される先は海外の大学や省庁、公的機関が多いです。
日本語教師の資格だけでなく、学歴・教師経験・語学力(派遣先の現地語および英語)が求められます。
公的機関で派遣される場合には、渡航費、居住費、生活費を得ることができ、帰国後の進路まで支えてくれるという手厚い制度があることも。派遣国の言語習得も後押ししてもらえることもあります。
合格できたら、国際交流の名の下で、日本の言語や文化を海外に広めるために活躍することが期待されるでしょう。
まとめ
日本語教師とは、日本語を母語としない学習者のために日本語を教える仕事です。日本語を学ぶ人の背景もさまざまで、多様な目的・目標を持って学習しています。
日本語教師の資格に加え英語力もあれば、資格の持つ専門性と英語の両方を武器にしてコミュニケーションが活発となり、活躍の幅も広がります。
2024年度以降には「公認日本語教師(文化庁・文化審議会国語分科会)」が設置され、日本語教師資格が国家資格となる予定です。国からも学習者からも、専門家として期待が高まる日本語教師の道を、ぜひ歩み始めてみませんか。