2022/02/08/
疑問
【現役日本語教師が徹底解説】日本語教師って仕事きついの?
外国人に日本語を教えたい、海外で活躍したい、英語を使って仕事をしたい、そんな夢を持って日本語教師を目指そうと思っている人も多いのではないでしょうか? しかしその一方で、日本語教師について検索してみると「きつい」「辞めたい」「仕事ない」などのネガティブな表現が一緒に表示され、夢実現の高い壁を感じてしまうことも。 「きつい」と聞くと、いくらやりたいと思っても二の足を踏んでしまいますよね? 日本語教師の資格を取得したりお金をかけて420時間の養成講座を受講したりしても、仕事を続けられなかったら、せっかくの努力が水の泡になってしまいます。 そこで今回は現役日本語教師の筆者が、仕事がきついかどうかについて、一般の人にはなかなか知り得ない情報も合わせてお伝えします。 そもそもどうして仕事がきついと言われるの? そもそも日本語教師の仕事はどうしてきつい、つらいと言われるのでしょうか? それには、以下の3つの理由が挙げられます。 ・授業準備と授業後の作業に膨大な時間と労力がかかる ・お給料が労働時間に見合っていない ・安定した職を得にくい これらについて、以下で一つずつ解説します。 授業準備と授業後の作業に膨大な時間と労力がかかる 日本語教師は、授業時間中に日本語を教えるだけが仕事ではありません。 授業前に授業計画を立てて資料や小テストを作ったり、授業後にテストの採点をしたり宿題の丸付けをしたり、やることは山ほどあります。 そして、それら1つ1つがとても時間と労力を必要とするんです。 筆者は教師になりたてで週に2回2コマ授業を担当しましたが、そのためにほぼ毎日朝から晩まで教案作成やその後の作業に追われていました。 その時は海外の大学で教えていて、日本語のクラスの他にもイベントの企画や開催、フリートークをするミニクラスも担当していたのでそれも忙しさに影響していましたが、教師一年目は週末も寝る間も惜しんで作業するほど切羽詰まっていました。 でも、経験を積んである程度要領を得ると、時間と心に余裕が生まれてきます。 知識が増えるので調べ物をする時間が減りますし、教案を描くコツを掴めたりネタの引き出しが豊富になったりもするので、心も体も楽になります。 同じ学校で教えていれば教材や資料などの使い回しができるので、授業前の作業時間が短縮できるのが嬉しいポイント。 ただ、毎年教える学生は変わりますし、教案や教材をより良くしようと思えばいくらでも改善できます。 そうして工夫しだすと「あれも、これも」とキリがなくなってしまい、ベテランになっても結局授業準備の作業に莫大な時間がかかることに変わりはなくなってしまうなんてことも。 人によっては、それがきついと感じるかもしれませんね。 お給料が労働時間に見合っていない 上述したように、日本語教師は長時間労働を強いられる場合も多い割に、お給料が良くありません。 経験が浅いと、日本語学校の専任講師は月給20万円程度から、非常勤講師は時給2000円程度からのスタートです。 非常勤講師の場合は、授業外の作業について一部手当がつく場合もありますが、無給の場合も多いです。なので、全ての作業を時給換算すると、コンビニやスーパーのアルバイトより時給が低いなんてことも珍しくありません 専任講師は年収にすると、生活していく最低ラインと言われる300万円くらい、あるいはそれ以下のお給料であることが多いです。経験と実績を積んで主任などに昇格しても、なかなか昇給は難しいというのが厳しい現実。 仕事のやりがいや情熱はお給料の多寡で決まるものではありませんが、モチベーションを決める大事な要素の1つです。 「これだけ頑張って働いたのにこのお給料って虚しいな」と思ってしまうとモチベーションは上がらず、きついと感じてしまうかもしれませんね。 熱意を持って日本語教育業界に飛び込んだ人でも、実際に仕事をしてみて生活していくのもきつくなってしまい、仕方なく転職するという方も少なくないようです。 安定した職を得にくい 日本語教師の職場は日本語学校や大学、高校、インターナショナルスクールや、プライベートレッスン、企業内講座、自治体の日本語教室など多岐に渡りますが、求人が豊富で就職の難易度があまり高くないのが、日本語学校。 日本語学校以外の就職先は特別な資格や経験(修士号や教員免許など)を必須としていたり、ボランティアを主に採用していたり、求人が希少だったりします。 なので、大多数の人は日本語学校への就職を目標にしますが、最初は非常勤講師からのスタートである場合が多いです。つまり、非正規雇用ということですね。 非常勤講師の場合、上述したように、授業前や授業後の作業を含めて労働を時給換算すると驚くほど薄給で、さらに健康保険や雇用保険などの加入が難しいことも。 非常勤講師の頃は、いくつかのバイトをかけもちしながらやりくりするという人も少なくありません。 でも、努力を重ねてある程度経験を積み、実績も能力もついてくると正規雇用の専任講師に昇格できることもあります。 ただ、日本語教師は非常勤やボランティアでの採用が大半を占めると言われており、バイトやパートでの不安定な勤務体系から抜け出すことはそう簡単ではありません。 そのような勤務体系は決して安定しているとは言えないので、それがきついと感じるかもしれませんね。 仕事が「きつい」と言うのは一面だけしか見えてないから?こんなメリットも ここまで「日本語教師の仕事はきつい」という解説を読んできた方は、「やっぱり日本語教師ってきついんだ。諦めようかな」と思う方も多いかもしれません。 でも、ちょっと待ってください。 今までご紹介した日本語教師のデメリットは、日本語教師の仕事の一面にすぎません。 どんな仕事にだって大変なこと、つらいことはありますよね? それと同じで、ご紹介したように日本語教育業界にももちろんダークな部分はあるんです。 でも同時に、ポジティブな面もたくさんありますよ。 日本語教師の仕事に挑戦したいと思っているなら、つらい面だけでなく、やりがいや将来性などポジティブなことについても見ておく必要があります。 ポジティブなことについて、主なものは以下の3つが挙げられます。 ・やりがいや充実感を感じられる ・手に職がつく ・異文化交流ができる ・求人の選び方や働き方次第で「きつい」を最小限にできる 以下でそれぞれ詳しく説明します。 やりがいや充実感を感じられる 日本語教師をしていると、「やっていてよかった」と思わずガッツポーズしたくなる場面に多く出会えます。 少し例を挙げると、以下のような場面です。 ・自分が一生懸命作った授業の資料に学生がのめり込んでいる時 ・クラスで、学生が楽しみながら日本語を勉強してくれていると感じた時 ・学生の日本語が上手になっていると感じた時 ・学生に感謝の言葉をかけられた時 日本語教師は多忙なのに薄給だとお伝えしましたが、何にも代えがたいこうした充実感を味わうと、嫌なことや疲れも一気に吹き飛びます。 実際、今日本語教育の業界で活躍している先生も、「一度この充実感を味わうとやめられない」と思っていらっしゃるでしょう。 手に職がつく 近年科学技術が急速に進歩し、今ある仕事の一部は将来AIに取って代わられてしまうと言われています。 特にAIが得意とする単純作業や高速計算などに関わる仕事は、AIによって代替される可能性が高いと言えるでしょう その点、教師は臨機応変な対応が求められるため、AIには代替されにくいと思われます。 学生やクラスによって教え方や導き方を少し変えたり、学生のモチベーションを高める工夫をしたりといった柔軟な対応は、機械が最も苦手とする分野です。 また、日本語を学ぶ学習者側からしても機械ではなく、日本語や日本文化に精通し、人の気持ちも汲み取りながら授業をしてくれる生身の人間から日本語を教わりたいと思うのではないでしょうか? このような意味で、教師の将来性は安定していると言えるでしょう。 異文化交流ができる 普段日本で生活していると、外国人と関わることってほとんどないですよね? でも、日本語教師の場合は仕事そのものが異文化交流とも言えて、今まで自分が知らなかった情報や知識、価値観に触れられます。 学生に自国の料理を紹介してもらったりイベントの話で盛り上がったりする中で、自分の世界がどんどん広がっていくのが感じられます。 海外で教えていれば、まさに毎日が発見の連続です。 様々な価値観や意見に触れることで「みんな違ってみんないい」という精神の大切さを身にしみて感じ、心の成長も促されるでしょう。 異文化交流によるこうした体験は、かけがえのない自分の財産になること間違いなしです。 求人の選び方や働き方次第で「きつい」を最小限にできる 日本語教育の業界は多忙なのに薄給で、なかなか安定した生活が得られないことが多いと上述しました。しかし、求人や働き方を選べば、そんな悩みも大幅に軽減できるでしょう。 例えば、日本語学校で非常勤講師をしているけれど、待遇に不満を持っている方。 そんな方は、オンラインレッスンの先生にも挑戦してみると、状況の改善が大いに期待できます。 特にコロナ禍でオンライン化が進み、オンラインレッスンの求人が一気に増えました。 オンラインレッスンであれば移動時間がなく、マンツーマンのものが多いため、授業前や後の作業も短縮できて効率よく稼げますね。 あるいは、日本語学校で専任講師をしているけれど、多忙と薄給の二重苦に苦しめられているベテラン教師の方。 そんな方は思い切って非常勤講師になり、今までの経験と人脈、実績を活かし、オンラインを含めた複数の学校で掛け持ちをしたり、もう少し待遇や職場環境の整った職場への転職を考えたりしてみるのがおすすめです。 または、教師としての経験やノウハウを活かして、日本語教師を続けながら日本語教育業界以外の分野(例えばライターや家庭教師など)でも活躍することも視野に入れてみる、というのも選択肢の一つになり得ます。 日本語教育の業界ではこのように多様な働き方ができますし、働き方や場所で状況を大きく変えられます。 まとめ 日本語教師を「きつい」と感じるかどうかは自分次第! 上述したように、日本語教育の業界は待遇や勤務体系などの問題できついと言われることは事実です。 筆者も、その問題には何度も悩まされてきました。 しかし、どんな仕事にだってきついことやつらいことはつきものです。でも同時に、どんな仕事にもきつさやつらさを超えて得られるやりがいや充実感もあるはず。 きついことがやりがいや充実感にまさってきついと感じてしまうかどうかは、あなた次第です。 他の誰かが「きつい」と感じることも、あなたはそう思わないことだってたくさんありますよね? でもそれって経験してみないとなかなか分からないことも。 なので、少しでも日本語教師の仕事に興味を持ったあなた、その可能性に心惹かれたあなたは、自分で経験してみるのが良いのではないでしょうか? 「百聞は一見にしかず」ですね。 もし「合わないな」と思ったらそこで方向転換すればいいですし、そうなったとしても様々な意味で学びがあるはずです。 理想の働き方を見つけて、日本語教師の「きつい」を最小限に抑えよう 上述したように、日本語教師の場合は、働き方や働く場所を選ぶことで「きつい」のもとになるデメリットを最小限に抑えることができるので、仕事のやりがいをより感じやすいはずです。 外国人に日本語を教えるという職業は、異文化に関わりながら人の成長を支え見守る素晴らしい職業。 海外で生活しながら働くチャンスも十分にあり、働き方や生き方の様々な可能性がみえてきます。 そんな日本語教師の仕事に興味を持った方は、求人の一覧と睨めっこしながら自分に合った働き方を模索し、「日本語の先生になりたい」という夢を叶えてみてはいかがでしょうか?